暮らし

【ダウン症児と私3】NICUの保育器で、ちっちゃな我が子とやっと再会

出産後、「呼吸数が多く、筋肉が弱い」ために、NICU(新生児特定集中治療室)へ入ることになったユキトくん。今回は、ナナさんがNICUへユキトくんに会いに行ったときのお話を聞きました。

 

Q.帝王切開での出産後、ユキトくんはNICUに入ってしまい、一緒の病室で過ごせなかったそうですが、どんな気持ちでしたか?

はじめての出産だったので、何も分からなくてずっと不安でした。帝王切開の傷の痛みもあり、出産直後は身も心もボロボロ。でも優しい看護師さんの励ましで、まずは1時間以上かけてがんばって手でオッパイを絞り、少量の母乳を冷凍してもらいました。

そこへ、我が子が障害児だという診断。「診断は間違いだったと言って欲しい」「きっと間違っている」と何度も思いました。私にしてみれば、妊娠が分かってからは、それまでの仕事も辞めましたし、タバコもお酒も特別な薬も飲んでいません。人一倍つわりがひどく半年近く入院したこともありましたが、その間も、赤ちゃんの状態が悪いとは言われませんでした。私だって、何も悪いことはしていません。ですが、「出産中に何か事故があったのではないか?」とも考えたりしました。

そんななかでも、冷静に診断書を見て考えれば、我が子が普通の子じゃないということは分かりました。信じたくない気持ちがあっても、わたしの隣にユキトはいませんでした。看護師さんにお願いして、翌日に赤ちゃんとの面会を予約しました。手続きをしながら、「予約をしないと我が子に会えないのか」と、また悲しくなりました。産婦人科の病室では、24時間赤ちゃんの泣き声が聞こえます。ほかのママは赤ちゃんと同じ部屋で過ごしているのに、わたしは1人病室で寂しさを感じていました。

 

Q.初めてユキトくんに会うためにNICUに行かれたときのことを教えて下さい。

面会予約をした次の日13時から、いよいよユキトに会いに、自分の入院している病室を出て、隣の建物へ行きました。途中、妊娠中にお世話になった産婦人科外来を通り、たくさんの妊婦さんを見掛けました。つい先日までは私も、そこにいる妊婦さんと同じように、健康な我が子を抱けるのが当たり前と思っていたなあ、なんて思い出したりしました。

主人と一緒にエレベーターを上がってNICU受付に着くと、問診票を渡され「風邪をひいていませんか?」「持病はありますか?」などの質問に答えます。指示にしたがい自分たちの体温を計り、冷凍してきた母乳を渡し、ロッカーへ荷物を置いて、手洗いと消毒をします。そして、マスクをして入室担当の看護師さんを呼んで、やっとNICUに入れました。

部屋に入ると、部屋の壁伝いにグルッと、保育器が30台くらい置いてありました。それぞれ赤ちゃんが入っていて、全員、心拍数や呼吸数、酸素濃度などを計っているモニターへ繋がっています。心拍数や酸素濃度などが低下すると「ピピピピ」と音が鳴ります。その警告音があっちでも、こっちでも常に鳴り響いていて、びっくりしました。ユキトを探してキョロキョロしていたら、担当の看護師さんが来て、もう一度手洗いと消毒をするように言われ、衛生管理が徹底されているなと感じました。

そしてやっと、ユキトと再会することができました。つい数日前までずっとわたしの中にいたちっちゃい赤ちゃんは、保育器に入って、心臓のモニターを付けて、点滴をされていました。

 

Q.NUCIではどんな説明を受けましたか?

ユキトは「呼吸がまだうまくできないので、保育器で酸素を管理している」「酸素濃度は70%から始めて徐々に減らし、今は50%で、明日には30%にする予定」という説明を看護師さんから受けました。また、「ミルクはまだあまり飲めないので、ブドウ糖の点滴だけをしている」と言われました。保育器の中で酸素を吸入しているので、ママであっても我が子に直接触れることはできませんでした。私は、ユキトの呼吸が落ち着くのを祈るばかりでした。

 

ダウン症の基礎知識3:原因は分っていない

ダウン症の人は、21番目の染色体が1本過剰であることは知られていますが、その原因は現在のところ、突然変異によるものと考えられています。高齢出産で発生率が高くなることから、年齢との因果関係があると考えられていますが、「なぜ」ダウン症になるかは分っていないというのが現状です。また、ダウン症には「21番トリソミー型」「転座型」「モザイク型」の3つの型があります。21番染色体が3本になっているのが「21番トリソミー型」で、大半がこの型に分類されます。そのほか、21番染色体の一部がほかの染色体にくっついて(転座)、過剰になっているのが「転座型」、通常の細胞と染色体が1本過剰になっている細胞が混ざっているのが「モザイク型」です。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。