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【和菓子歳時記1】6月「錦玉紫陽花(きんぎょくあじさい)」

爽やかな初夏も過ぎて梅雨入りを迎え、紫陽花(あじさい)の季節がやってきました。今回は、6月の花「紫陽花(あじさい)」をモチーフにした和菓子「錦玉紫陽花(きんぎょくあじさい)」をご紹介します。和菓子には、時節の草花をモチーフにしたものも多く、日本の季節や歳時を映しています。その季節にしか作らない和菓子を知ると、季節の移り変わりを楽しむことができますよ。

 

和菓子で季節を楽しむ、6月は紫陽花

雨が多く降り、お天気の冴えない6月ですが、草花には大切な季節。しっとりと水を含んだ若葉は、生命力にあふれて艶やかです。初夏から夏に移り変わるこの時期は各地で紫陽花が開花し、和菓子店には、新緑や水をモチーフにしたものが多く並びます。薄曇りの風景のなか、雨露に濡れた紫陽花。丸めた白あんを紫陽花の額に見立てた小さなサイコロ状の“錦玉”で包んだ「錦玉紫陽花」は、そんな姿を写し取った紫陽花の和菓子です。

 

錦玉(きんぎょく)ってなに?

錦玉と書いて“きんぎょく”と読みます。錦玉は、寒天、砂糖、水飴などを原料とした、和菓子の素材名です。原料を混ぜ、煮溶かして固めたもので、砂糖や水飴を加えることで、通常のあんみつやみつまめの寒天より透明に仕上がります。そうして作った透明感のある錦玉は見た目が涼し気なため、夏のお菓子に用いられることが多く、冷やしても美味しく召し上がれます。

 

寒天いろいろ、和菓子で使われるのはフレーク寒天が多い

寒天は、粉寒天、糸寒天、棒寒天、フレーク寒天など、いろいろな形状のものが販売されていますが、どれも天草などの海藻を材料としています。ご自宅で少しだけ使うときは、ふやかす下準備が不要な粉寒天が使いやすいです。また、香りや風味が格別なのは「凍結脱水法」という、昔ながらの天日干しで作られたもの。そのなかで私も使っていておすすめなのが、工場で凍結脱水法を再現して作られたもので、屋外で干したものと違ってゴミなどの混入がないため洗わずすぐに使えて便利。現在はフレーク状のものだけが販売されています。ネットでも手に入るので、試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

和菓子は、見た目などお菓子そのものに季節感がある珍しい食品です。材料だけでなく、色、食感、菓銘なども含めて、季節を表現しています。今回ご紹介した、紫陽花のお菓子は、いろいろなお店で作られているので、各店の個性的なお花を、是非、楽しんでみて下さい。6月16日には、全国和菓子協会が定めた、和菓子の日もあります。季節の和菓子をどうぞ、お召し上がり下さい。

 

 

石原マサミ(和菓子職人)

創業昭和13年の和菓子屋・横浜磯子風月堂のムスメで、和菓子職人です。季節のお菓子や、和菓子にまつわる、歳時記などのご紹介を致します。楽しく、美味しい和菓子の魅力をお伝えできたら、嬉しいです。石原モナカの名前で、和菓子教室も開催中。ブログはこちら