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【基本の薬膳12】体を冷やす?温める?食材分類「五性」、代表食材と効果

もうすぐ処暑なので、暑さがいったん落ち着いてくる頃ですね。薬膳では「五性」に分類された食材を、体調に合わせて選びながら体バランスを調えるため、今回は食物の性質や作用についてご紹介します。これまで薬膳の基になる「五行(陰陽五行)説」「陰陽」の考えをご紹介してきましたが、食の性味(食性)も5つに分かれ、「涼性」(涼寒性のうち涼性)、「寒性」(涼寒性のうち寒性)、「平性」「温性」(温熱性のうち温性)、「熱性」(温熱性のうち熱性)から成っています。体を冷やす食材か温める食材かを知りながら、バランスの良い食事(「五味調和」)を心掛けましょう。

 

「涼性」の特徴や代表的な食材

「涼性」の性味は暑い時季に体の熱を冷ましたり(「清熱」)、必要な「水」を補って口の渇きを和らげます。食材によってはのぼせや目眩(めまい)を解消し、「利水」の作用で体から不要な「水」を排出し、代謝バランスも整えます。

 

「涼性」の主な食材 

豚肉、マグロ、豆腐、ソバ、春雨、緑豆、ホウレン草、春菊、セロリ、キュウリ、ナス、ダイコン、マッシュルーム、マイタケ、ビワ、ナシ、麦茶、緑茶  など

 

いずれの性味も臓腑に働きかけるものと考えられ、「涼」「寒」と「温」「熱」はそれぞれ程度の差になります。

 

「寒性」の特徴や代表的な食材

「寒性」の性味は、「涼性」より強い作用で体の熱を冷まし、熱毒を解いたり消炎の効果があります。季節を問わず、体の熱を発散させにくいと感じる方におすすめです。さらに海藻類といった「鹹味」や食物繊維の多い食材には、便秘改善の効果も認められています。

 

「寒性」の主な食材 

カニ、アサリ、牡蠣(微寒)、昆布、海苔、ゴーヤ、冬瓜(微寒)、タケノコ、ゴボウ、レンコン、トマト(微寒)、ハモ、ハマグリ、柿、バナナ、メロン、スイカ、寒天、塩  など

 

冷えの強い方は食べる季節に気を付けたり、「温性」「熱性」の食材、調味料と組み合わせる、または控えます。

 

「平性」の特徴や代表的な食材

「平性」の食材は体を温めたり冷ましたりする作用がなく、偏りが非常に少ないです。それでいて滋養強壮に効果的なため、病中病後の食事やお子さんに用いてもよいと考えられる食べ物です。初期に与える離乳食の食材になっているものも多いですね。ほかの性味と違って、仮に長期間、たくさん食べても問題が起こりにくいとされる点も特徴の1つです。

 

「平性」の主な食材 

大豆(納豆)、卵、鶏肉、サケ、サバ、サンマ、イカ、タコ、キャベツ、サツマイモ、ジャガイモ、山芋、ブロッコリー、ニンジン、シイタケ、キクラゲ、サヤエンドウ、リンゴ、ブドウ、黒豆、黒ゴマ、牛乳、ハチミツ(平、温) など

 

人は自然界から発生したので、自然由来の食べ物の力を借りて不調を改善すると薬膳では考えます。ですので、自然から授かった食材の性味を知ることが大切なのですね。

 

「温性」の特徴や代表的な食材

「温性」の性味は冬に体を温めるほか、冷え性に効くとされ、穏やかに「気」、「血」を巡らせて疲れを取り、体を元気にしていきます。「熱性」食材を含め、効果の強い食材は食べ過ぎや生で摂り過ぎないよう気を付けましょう。

 

「温性」の主な食材 

モチ米、牛肉、羊肉、イワシ、アジ、ウナギ、エビ、長芋、カボチャ、玉ネギ、ニンジン、小松菜、杏、ミカン、松の実、クルミ、栗、ニラ、シソ、ショウガ、長ネギ、ニンニク、黒砂糖、酢、味噌、紅茶、珈琲  など

 

冷えの強い方は、体を外側から温める工夫も大切ですね。軽い運動や入浴、少量のお酒でも体に「血」が循環し、体が楽になりますよ。

 

「熱性」の特徴や代表的な食材

「熱性」の性味は、発汗を促したり新陳代謝を高めます。「温性」よりも作用が強く興奮作用もあるため、高熱時には禁忌です。例えば唐辛子は「血」を促し冷え性を改善することで有名ですが、体内に熱を溜めやすい方は控えめにします。

 

「熱性」の主な食材 

ニンニク(生)、羊肉、酒類、サンショウ、コショウ、唐辛子(五味の「辛味」が多い) など

 

食材選びの基本は、自分の体調に合わせながら「旬の食材」や土地に受け継がれた食品を中心に、バランス良く。その際、体を冷やす食べ物なのか、温める食べ物なのかにも気を付けるようにしてください。

 

「微寒性」や「涼性」の食材も食べ方を工夫できる!

今回は、食材の「五性(五気)」についてご紹介しました。5つの性味(食性)は「涼性」と「寒性」を合わせて「涼寒性」食材、「温性」と「熱性」を合わせて「温熱性」食材という呼ばれ方もします。「平性」食材はどの体調にも合わせやすく、食材の5~7割は「平性」と考えられていますよ。いつもご紹介しているメニューや食材は、なるべく「平性」食材をご紹介していますが(トウモロコシや枝豆等)、特別な作用があったり夏野菜では、冷え性や体に熱がこもるといった症状に対して注意を添えています。なお、「微寒性」や「涼性」の食材は、薬味との組み合わせたり、火を通したり、気温の高い季節に食べると「平性」へ移行する場合があるため、冷えが強い方も工夫次第で食べることができます。逆に、「温性」の薬膳(食べ物)でも冷蔵、冷製にしたり、氷を使うとその作用が弱まるため、食性を変化させる工夫も調理に摂り入れてみてくださいね!

 

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。