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知らずに使うと危険も?「アロマテラピー」を安心して楽しむための注意点

日常生活において、アロマテラピーに触れる機会が増えています。今回は、アロマテラピーを安全に楽しむための注意点を、アロマの歴史を交えてお伝えしましょう。精油は植物から得られる天然の物質ですが、植物の有効成分が高濃度で含まれています。そのため、使用にはいくつか注意が必要です。基本的なルールを守り、アロマテラピーを安全に楽しみましょう。

 

アロマテラピーの歴史

現在のアロマテラピーの基礎となる、ハーブや薬草、精油は、古代ローマ時代から医療に用いられてきました。新約聖書には、「没薬(ミルラ)、乳香(フランキンセンス)」を、イエス・キリストの誕生の際に、黄金とともに献上したとも記されています。「アロマテラピー」という用語は1930年代にフランスで誕生しましたが、各国に普及していくなかで、精油の薬理作用としての効果だけでなく、香りによる効果についても研究が盛んになっています。

 

アロマの効果には日本の医療現場も注目

日本において精油は、医薬品ではなく「雑貨」として扱われていますが、香りを嗅いだときの効果が注目され、最近では医療分野でもアロマを取り入れるところが増えています。例えば、産科ではお産の不安を和らげたり、産後の疲れを癒すときに用いられます。またPMSや更年期のイライラや不安の解消にも、その効果が注目され始めています。そのほかの病気でも、アロマでリラックスすることにより、治療に対する不安や苦痛を取り除くといった目的で、導入している医療機関もあります。

 

精油の製造方法

精油は、主に「水蒸気蒸留法」「圧搾法」「揮発性有機溶剤抽出法」の3つうちいずれかの方法で作られます。同じ植物の精油でも、メーカーや産地、製造時期によって微妙に香りが異なります。アロマテラピーに慣れてきたら、お好みの産地やメーカーのものを見つけて楽しむのもいいですよ。

  1. 水蒸気蒸留法: 原料の植物を蒸留釜に入れて蒸気を吹き込み、芳香物質を気化させて精油を得る方法で、最も多く用いられている方法
  2. 圧搾法:主に柑橘類の果皮から精油を得る方法で、果皮を機械のローラーで圧搾し、精油を分離させて得る方法
  3. 揮発性有機溶剤抽出法:エーテルなどの有機溶剤に植物をつけて芳香成分を溶かして抽出する方法で、ローズやジャスミンなどの精油で用いられます。この方法は手間がかかるうえ、精油の抽出に多くの植物が必要なため、精油の値段も高くなりがちです

 

精油を扱うときの注意点

精油は植物の成分が高濃度に濃縮されているため、安全に使用するために、以下のような点に注意が必要です。

  1.  皮膚に付ける際は、原液ではなく、キャリアオイルなどで薄めて使用する
  2.  飲用やうがいをしたり、眼に入れないようにする
  3.  揮発性や引火性があるため、火の近くに置かない
  4.  誤飲などを避けるため、子どもやペットの手の届かない場所へ保管する
  5.  直射日光と湿気を避け、キャップをしっかり閉め冷暗所に立てて保管する
  6.  開封後は1年以内(成分が変化しやすい柑橘類は半年以内)を目安に使い切る

 

精油の使用量の目安

精油の使用量は、以下を目安にしましょう。

  1.  芳香浴法では、使用する精油は1~5滴
  2.  入浴時の使用では、家庭用風呂(200L)に対し、使用する精油は1~5滴
  3.  肌に塗るトリートメントオイルでは、体は1%以下、顔は0.1~0.5%以下に希釈する

 

<精油の希釈の目安>

  •  0.5%:ベースオイル10mlに精油1滴
  •  1%:ベースオイル10mlに精油2滴

 

病気の治療中や妊娠中は、医師や専門家に相談してから

病気の治療中にアロマを使う際は、必ず主治医に相談して許可を得ましょう。また妊娠中のなかでも特に妊娠初期は、芳香浴のみで使用し、精油の量は少なめにして長時間の使用も避けましょう。芳香浴以外の使用は安定期に入ってから、主治医の許可を得て行ないましょう。精油はアロマ専門店で販売員に相談しながら購入し、オイルトリートメントを受ける際は、妊婦へのアロマの使用経験を積んだ専門家に相談すると安心です。精油のなかには子宮収縮作用、通経作用、ホルモン様作用をもつものがあるので、妊娠中は以下の精油の使用は控えましょう。

スパイクラベンダー、クラリセージ、セージ、タイムチモール、バジル、ヒソップ、フェンネル、ラバンジン、ワームウッド

また、妊娠中は臭覚や肌も敏感になっていることが多いので、これ以外の精油でも使用中に不快感や刺激を感じたら、直ちに使用を止め、肌に付いた精油は洗い流しましょう。

 

小さい子どもへの使用は少量に

大人に比べ五感が未発達な子どもは、高濃度の精油が強く作用しますので、使用量を少なくする必要があります。 3歳未満の乳幼児の使用は、芳香浴に留めましょう。芳香浴の際も、まずは精油を1滴にして、30分以内の使用がいいでしょう。3歳以上の子どもでも、精油の使用量は大人の1/10~1/2以内にしましょう。

 

初めて使うときや皮膚が弱い人は、パッチテストで安全を確認

トリートメントやスキンローションなど、精油が含まれたものを肌に塗る場合は、事前にパッチテストをすると安心です。腕の内側の柔らかい部分へ500円玉くらいの範囲で塗って24~48時間放置し、かゆみや炎症などの異常が起こらないか確認します。途中で刺激を感じたら、すぐに洗い流し、使用は取り止めましょう。

 

紫外線により炎症を起こす「光毒性」に注意

柑橘類の果皮から得られる精油成分の一部には、日光などの強い紫外線と反応して、皮膚に炎症を起こすものがあります。代表的なものがレモン、グレープフルーツ、ベルガモットです。これらの精油を使ったオイルトリートメントのあと陽を浴びるときは、塗布した部位に紫外線が当たらないよう必ず衣服などで覆うようにしましょう。なお、柑橘類でもオレンジスイートには光毒性はないので、安心して使用できます。

 

精油の皮膚刺激に注意

精油成分の一部には、皮膚から精油が浸透したときに、皮膚組織や末梢血管を刺激して、炎症や赤み、かゆみなどを起こすものがあります。この代表的な精油には、イランイラン、ジャスミン、ティートリー、ブラックペッパー、ペパーミント、ユーカリがあります。これらの精油をトリートメントやアロマバスなど、皮膚へ触れる方法で用いるときは、通常の使用量の1/2くらいの低濃度から使用を開始して、安全を確認すると安心です。

 

まとめ

古代ローマ時代から、人々は生活のなかへ香りを取り入れてきました。近年では日本でもアロマに関する研究や導入も盛んになり、さまざまな分野で期待をもたれています。今回紹介した注意点は、今までの研究や使用経験から分かったことも多いです。基本的なルールを守って、安全にアロマテラピーを楽しんでくださいね。

 

<参考>
アロマテラピー検定公式テキスト(日本アロマ環境協会)
医師が教えるアロマセラピー(世界文化社)

 

SEIKA(薬剤師・アロマテラピーインストラクター)


慌ただしい毎日の中にも、アロマをちょっとプラスして楽しんでいます。子供のパワーに負けない体を目指したい、3児の母です。薬剤師、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。