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【基本の薬膳15】不調原因になっている過不足を知る、「虚」と「実」の証

東洋医学や薬膳では体感を大切にし、不調を感じたら旬の食材や漢方、症状を和らげるメニューを使って健やかな生活を目指します。自覚症状を見極めるための体質として、前回の「寒」「熱」続き、今回は「虚」「実」を学んでみませんか。これまであった何となくの不調を、具体的に知る機会になりますよ。簡単に言うと、体の証(しょう・反応や症状のこと)のなかで、「虚(きょ)」の証は不足、「実(じつ)」の証は過多を示します。さらに「陰」と「陽」(「陰」の強い症状、「陽」の強い症状)の証を組み合わせると、自分の体が冷えているか熱を封じ込めるタイプ(寒熱)かも見えてくるので、体調を振り返りながら不調を和らげていきましょう!

 

体質や症状で見る「虚証」の特徴

これまで「気「血をご紹介し、それぞれ「気」や「血」が足りていない状態と説明しました。どちらにも「」という文字が付き、「不足」を意味しています。それでは体に表れる特徴から見ていきましょう。

 

「虚証」の特徴

細身・ヒョロっとした体型、声に力がなく気力がないように感じられる、倦怠感を抱えていることが多い、胃内停水の感覚がある(ポチャポチャ音がする)、だるい、食欲不振、内臓が下垂傾向にある(胃下垂、腸下垂)、五臓の不調、太っている場合は水太りが多い、冷製食品を摂ると腹痛や不調を起こす、夏バテしやすい、風邪を引きやすい冬の冷え性が強い、めまいがする  など

 

「虚」「実」の証は、何となくの見た目でも判断できるので、そこが面白い点と言えます。また「虚」と「実」の証は、入り混じって表れることもあります。

 

体質や症状で見る「実証」の特徴

「実証」は「虚証」の逆の症状ですが、行き過ぎ(過多)を意味します。

 

「実証」の特徴

筋骨隆々、腹に筋力が付いている、声が大きい、エネルギーに満ちているように見える、血色が良い、胃腸が丈夫、栄養状態が良好、食べもので荒れ・アレルギー症状がない、食欲旺盛、疲れにくい、暑がりなことが多い  など

 

ほかの証にも言えますが、「寒」体質より「熱」が、「虚」の体質より「実」の方が何となくお得そうに感じるかもしれません。ですが、人それぞれに良さがあるように、重要なのは「中庸」(=バランス、健康)です。「陰」「陽」の体質と絡めていくとそのことがより分かってきますので、続けてお付き合いくださいね!

 

「陽」の「虚・実」を示す「陽虚」と「陽実」の体質とは?

「実証」や「虚証」にも、【基本の薬膳10】でご紹介した「陰」「陽」の概念が関係します。陰陽が減ったり、増えすぎたりして起こる体質や症状を診ていきましょう。

 

「陽虚」(虚 / 陽)の特徴> … 「寒証」寄り

 

  • 虚証。「陽」の不足(または減っている)状態
  • 加齢でも起こる
  • 疲労感が強い、胃腸が弱い、食欲不振、便臭が強め、尿量が多く薄い、臓器に異常がある・働きが滞る、冷えがある など
  • 代謝は活発

 

「陽実」(実 / 陽)の特徴> … 「熱証」寄り

  • 実証。「陽」の多い(または増えている)状態
  • 健康体、栄養状態は良好、胃腸が強い、疲れにくく無理がきく など
  • その一方で便秘しがち、不調があっても気付かない、自分の不調が分からない、突然死を招く場合もある

 

「陽」が減っていくと「寒証」に偏り、「陽」が増えすぎると「熱」体質に傾いていきます。

 

「陰」の「虚・実」を示す「陰虚」と「陰実」の体質とは?

続いて「陰虚」と「陰実」の証です。「陰」が減っていくと「熱」体質に寄っていき、「陰」が増えていくと「寒」体質に傾き、それぞれに特徴があります。

 

「陰虚」(虚 / 陰)の特徴> … 「熱証」寄り

  • 虚証。「陰」の不足(または減っている)状態
  • 風邪を引きやすい、胃腸虚弱、痩せ型が多い(または痩せた)、胸のドキドキ、ほてり・のぼせを感じることがある、喉が渇く、肌乾燥、疲れやすく疲労感が強い、無理はできない など

 

「陰実」(実 / 陰)の特徴> … 「寒証」寄り

  • 実証。「陰」の過多(または増えている)状態
  • 頻尿、下痢しやすい、暑い時季でも汗をかきにくい、体の内側に冷えが起こる、寒い季節を苦手とする  など
  • 代謝は低下、体力は残っている状態

 

東洋医学や薬膳ではバランスを取りながら体を調整して、健康を目指していくことが基本です。そのため自分に表れた体質や性格などの特徴を知って、バランスを建て直す指標にしていきます。健康体だからといって油断すると、体調不調に気付かず大事に至ることがあるので注意が必要です。

 

【プチポイント】

漢方医や鍼灸師(東洋医学のエキスパート)の先生は、さらに細かく分岐した証を見極めながら漢方薬を処方していきます。どの指標を選ぶかは、先生によって異なるそうですよ。薬膳の柱は「寒」「熱」で、体に冷えがあるかないか。食の「五性」を参考に、体を冷やす食材か温める食材かを知り、バランスのとれた配合(「五味調和」)で食生活を考えていきましょう。旬の食材を摂り入れたり、不調を和らげる食材を選ぶのも、体にとって大切なことですよ!

 

食材選びの前に気を付けたいこと

体質や不調が分かってきたら、自分の体に合った食材を選んでいきましょう。ここで大切なのは、薬を処方されていて避けた方がいい食材があれば必ず除外すること。担当の医師や薬剤師からの重要な伝達事項は、口頭でも伝わっていると思いますが「お薬手帳」をチェックするのも1つの方法ですね。また食べた食材の性味が強いと感じたら控え、気になる症状があれば専門医に相談します。それ以外は、「寒証」の傾向が強く冷えが気になる場合は、体を温める「温熱性」食材を摂り、「熱証」でのぼせや熱が抜けにくい場合は、体を冷やす「涼寒性」食材を中心にバランスを取ります。来週は証を見極める「四診」をご紹介しますので、楽しみにしていてくださいね!

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。