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【これからは予防の時代27】遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群の方の検診と予防

前回は、「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」かどうかを検査する方法をご紹介しました。今回は、遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群と診断されてしまった場合、どのように乳房の検診をし、ガンを予防していくかをご紹介します。ガンリスクは年齢が上がるごとに上昇しますので、年代ごとに実施する検査方法も変化していきます。

 

乳房の検診と予防

遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群の方への、乳ガンを予防するための検診は、年齢ごとに以下のような形で行ないます。

  • 18歳から、乳房の自己検診を行なう
  • 25歳から、医療機関で半年~1年に1回の頻度で視触診を受ける
  • 25~29歳、あるいは、家族が乳ガンを発症した最も早い年齢から、1年に1回の頻度でMRI検査(MRI検査ができなければマンモグラフィ検査)を行なう
  • 30歳~75歳では、1年に1回のMRI検査とマンモグラフィ検査を行なう
  • 75歳以上では、個別対応
  • 乳ガンの治療をした場合、治療後は、残っている乳房組織に対して1年に1回のマンモグラフィとMRI検査を継続する
  • 乳ガンリスクを下げるために、ガンを発症する前に乳房を切除する「リスク低減手術」について検討し、医療従事者と話し合う

乳ガン検査と被爆による、ガンリスクの関係

30〜39歳では、マンモグラフィ検査による被爆歴と乳ガン発症の間には、因果関係はありませんが、30歳未満では、あらゆる被爆を伴う検査歴が、乳ガンリスクを上昇させます。しかし、BRCA1/2遺伝子に変異のある女性が70歳のときに乳ガンを発症するリスクは、39〜57%と高い確率です。そしてMRIが乳ガン検出できる確率(感度)は77〜100%で、マンモグラフィは16〜40%、超音波検査が16〜40%と比べ、圧倒的に高いものとなっています。

 

「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」のガン検査にはMRIが最適

これらのことから、BRCA1/2遺伝子に変異のある女性に対しては、診断の精度、安全性を重要視すると、乳房MRI検査が最も有効と考えられます。しかし乳房MRI検査は、現在は保険適用外です。そのため、検査費用や造影剤によるリスクを考えて、一般の検診では導入していないのです。

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。