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【これからは予防の時代28】遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群の乳房切除

アンジェリーナ・ジョリーさんが行なったことで話題になった、乳ガンリスク低減を目的とした乳房切除術。今回は、この乳房切除のリスクや日本での実態をご紹介したいと思います。ガンになるリスクが減らせることは分かっているのですが、解明されていないリスクもあるのです。

 

変異陽性者でもリスク低減乳房切除は、細心の注意が必要

BRCA1/2遺伝子に変異があり、まだ乳ガンを発症していない女性へ、乳ガン発症リスクの低減を目的とした乳房切除術は、細心の注意のもとで実施してもよいとされています。ただし、十分な科学的根拠があるとは言えないというのが、現状の見解です。

 

このような見解ですので、BRCA1/2遺伝子に変異があり、すでに乳ガンを発症している女性が、反対側の乳房の乳がんリスクを低減のため、乳房を切除することも同様で、十分な科学的根拠があるとは言えないものの、細心の注意のもとで実施してもよいとされています。

 

乳ガンリスクは減っても、死亡率が減少するかは未知数

そのような評価の一方で、遺伝子変異が陽性で乳ガン未発症の人が両乳房を切除したり、乳ガン発症者が反対の乳房を切除したときの乳ガン発症リスク低減効果は、90%であるという説もあります。

 

とは言うものの、乳ガン未発症者が両乳房を切除して、どのくらい生命予後が改善されたのかは示されていません。確かに、乳房切除は乳ガンの発症率を抑制しますが、全身への別の影響がないと言い切れないということです。健康な乳房を切除することは、当然、全身に影響を与えます。それが、死亡率につながるようなものなのかは、現在はまだ分かっていないということです。

 

それでも「リスク低減乳房切除」をすべき理由

乳房を切除することが、死亡率関連するか分かっていないなかでも、BRCA1/2遺伝子に変異があれば、乳ガンになっていな乳房を切除した方がいい理由としては、遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群のガンには以下のような特徴があるからです。

  • ガンの早期発見が難しい
  • ガン発見時には、進行ガンであることが多い

また遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群であることが、本人の不安となり、その後の人生に影響を与えるような場合も、本人が乳房切除を希望するのであれば、検討すべきと言えるでしょう。

「リスク低減乳房切除」の日本での実情

ただし現在の日本では、乳ガンリスク低減目的の乳房切除術は、保険が適用されないうえ、各病院の院内倫理委員会で承認のうえ実施されるという実態です。

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。