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【和菓子歳時記20】子孫繁栄を願い、端午の節句にいただくお餅「柏餅」

和菓子店では、桜が終わると季節は「初夏」になり、端午の節句に向けた準備で慌ただしくなります。今回は、端午の節句のお菓子としても知られる「柏餅」のご紹介です。「柏餅」と言うと柏の葉で包んだものをイメージする人が多いと思いますが、サルトリイバラの葉で包んだ「いばら餅」を「柏餅」と呼ぶ地域もあり、端午の節句にいただくお餅は、全国にはさまざま存在しています。

 

柏の葉で包んだ「柏餅」は日本独自のお菓子

「柏餅」は、平たく丸めた餅で粒あんや味噌あんなどを挟んで柏の葉で包んだもので、江戸時代の江戸地域が発祥の、日本独自のお菓子です。柏の木は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、家系が途切れない「子孫繁栄の縁起物」として、男の子の節句「端午の節句」に食べられるようになったと言われています。ですが、同じように餅を葉で包んだお菓子は、それ以前から全国に存在していました。そのため関西以西では、薬用植物の「サルトリイバラ」の葉などの柏の葉以外で挟んだ餅を、今でも「柏餅」あるいは「いばら餅」「しば餅」「かたら餅」などと呼んで、「端午の節句」のお餅として親しんでいます。

 

かつては「新粉餅」、現在は多様化している「柏餅」の材料

柏餅は、かつては「うるち米」を粉にした「上新粉」だけに水を加えて練り、蒸して作ることが多かったのですが、現在では「上新粉」へほかの材料を混ぜることで、弾力や歯ごたえ、柔らかさを出したものもあり材料と食感が多様化しています。例えば、モチ米を粉にした「モチ粉」を加えると弾力と歯ごたえが、葛や寒天由来の凝固成分を加えると柔らかさが出ます。また中の「あん」は、小豆が原料の「こしあん」「つぶしあん」のほか、地域によって白みそを材料にした「味噌あん」があります。

 

手作り「柏餅」の葉っぱが剥がれない!どうすれば良いか?

「柏餅」を手作りしたら、葉っぱが貼り付いてはがれずに困ったことはありませんか?葉と餅のくっ付きを防ぐには、餅を冷やして保存し食べる直前に葉を巻くようにするか、ごく薄く食用油を餅に塗るといいでしょう。和菓子店では販売の直前に葉を巻いて予防していますが、完全にくっ付かないようにするために、材料の一部に寒天由来の凝固成分や特殊なデンプンなどを使用したり、餅の表面に食用油などを薄くコーティングしているところもあるようです。

 

まとめ

最近では製菓材料店などで「柏葉」や「柏餅ミックス」なども販売されているのでゴールデンウィークの休日に手作りしてみるのも楽しいですよ。ただし、家庭で手軽に作れる餅系の生菓子は、日持ちのしないものが多いので、作ったらなるべく早く食べるようにしましょう。手作りとお店の「柏餅」を食べ比べるのも、手作りするときの参考になると思いますので試してみて下さいね。

 

 

石原マサミ(和菓子職人)

創業昭和13年の和菓子屋・横浜磯子風月堂のムスメで、和菓子職人です。季節のお菓子や、和菓子にまつわる、歳時記などのご紹介を致します。楽しく、美味しい和菓子の魅力をお伝えできたら、嬉しいです。石原モナカの名前で、和菓子教室も開催中。ブログはこちら