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【ダウン症児と私30】3、4歩自分から歩くように!変化の裏側にあったもの

苦手なことに「嘔吐反応」が出るようになってしまったユキトくん。今回は、その後のユキトくんの成長について、ナナさんへ伺いました。運動会、文化祭といった行事や、10月から入ったお友だちとの出会いなどを経て、つかまり立ちから数歩歩ける姿が見られるようになったそう。ユキトくんの変化には、一体どんな理由があったのでしょうか。

 

夏のプールは、中耳炎対策に苦労

Q.幼稚園のプールの時間は、どのように過ごしたのですか。

A.幼稚園も児童デイサービスにも、プールの時間がありました。ユキトは滲出性中耳炎で手術を受けてから、耳にチューブを入れています。日常生活でも、耳に水が入らないように、特に気を付けなければなりません。児童デイサービスでは、私の付き添いなくプールへ入れるのは不安だったので、プールのある夏の1カ月は、お休みしました。週2回の幼稚園は母子通園だったので、プールの時間は、ユキトが顔を水に浸けたり耳に水が入らないよう、私が付きっきりで見守りました。ほかの子もいるプールでずっと見守るのは、かなり大変でした。プールやお風呂で付きっきりというのが、いつまで続くのかは正直今でも不安です。

 

運動会やパラバルーンも、拒否反応なく遊べるように

Q.運動会での付き添いはどうでしたか?

A.嘔吐反応があって苦手だった赤の玉入れは、練習の甲斐もあって嫌がることもなく楽しく過ごせました。いつも歩けない子のクラスでのんびりしていますが、全員が参加する運動会は、準備運動から歩ける子と一緒だったので、とてもハードで少し疲れました。ですが、ユキトも私も一生懸命頑張り、良い思い出になりました。

 

Q.ほかの療育のプログラムで、苦手を克服できたものはありますか?

A.秋になると、園庭に出てパラバルーンで遊ぶようになりました。パラバルーンは、カラフルで大きな布を大人が数人で持って上下に動かし、その下にいる子どもたちが、頭の上で上下する布に触ったり隠れたりして楽しみます。始めは訳も分からず布の中にいたユキトですが、周りのことが分るようになると何度も泣きながら逃げ出しました。でも9月ごろになると逃げる距離が短くなり、10月に入ると笑顔が出てきて、最後は手を伸ばして遊べるようになりました。

 

Q.続けることで不安が払拭されると、楽しめるようになるのですね。秋は行事が多いですが、ほかにはどんな行事がありましたか?

A.文化祭ではお遊戯を楽しんだり、ハロウィンでは魔女に扮した園長先生に驚いて泣き出したり、いろいろな思い出ができました。また秋の遠足では、芝生の上で立とうとして、何も捕まらずに4歩くらい歩けるようになりました。大きな進歩です。

 

新しいお友だちが入り、お兄ちゃんとしての自覚が芽生える

Q.そのほか、ユキトくんに何か変化はありましたか?

A.ユキトの入った歩けない子のクラスは4人でスタートしましたが、10月から新しいお友だちが2人入園して、少し賑やかになりました。新しいお友だちは、ダウン症でまだ1歳。体も小さく、2年前の小さくて寝てばっかりだったユキトを思い出し、懐かしい気持ちになりました。ユキトは、10月ごろから率先してプログラムを楽しめるようになったのですが、これはこの後輩のお陰もあるように思います。かわいい後輩がいると、ユキトはまるで自分が先輩だよと言わんばかりに立つ練習を始め、小さいお友だちにアピールします。これにはわたしも驚きました。

入園したばかりのころは、お粥も口から出してしまう状態でしたが、先生方の本当に熱心な指導で、柔らかい給食なら何とか食べられるようになました。後輩が入ってきてからは、自分で歩こうという意志が強くなり、3、4歩ですが独りで歩き始めました。さらに1年前は、風邪を引いてばかりでしたが、今年はずいぶん体も強くなりました。年少のユキトも、あと2年半で小学生になります。私は、ユキトの進路を本格的に考え始めました。

 

ダウン症の基礎知識30:家族以外の人からの影響で成長することも

ダウン症の子どもは体が丈夫でなかったり、ユキトくんのように歩けるようになる時期が遅れる子もいるので、行動範囲が限られてしまうことがあります。それでも、思い切って積極的に外に出て、いろいろな刺激を受けることも重要。ナナさんは、「後輩が入ってから、ユキトの歩こうという意志が強くなった」と話していましたが、先生やお友だち、後輩などとの関係から刺激を受けることが、ユキトくんの成長によい影響を与えているのでしょう。お母さんだけが、子どもの成長の責任を負うのは大変です。さまざまなサービスを利用しながら、外の人と関わる環境に子どもを連れ出せば、子どもにも刺激になりますし、ママの負担も減らせますよ。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。