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【ダウン症児と私32】歩けないけど、来年は歩けるコースへ行かせたい!

4歳になる少し前に、2年後に入学する小学校を見学して、少し先の未来が見え、見通しが立ってきたナナさんとユキトくん。今回は、次年度の年中でのクラス決めで悩んだときのお話を伺いました。後輩からの刺激を受けて、積極的に歩こうとし始めたユキトくんですが、まだ1人で歩けるには至らず、ナナさんは年中さんのクラス分けで悩んでしまいました。

 

まだ歩けないユキトくん

Q.前回、特別支援学校を見学して、ちょっと先が見通せるようになりましたね。

A.はい。特別支援学校を見学して、ユキトを通学させたい小学校、中学校のイメージができ、私は精神的に楽になったと思います。私の心が軽くなったこともあり、今まで我が子がダウン症だと伝えていなかった昔からの友達にも、ユキトのことを打ち明けられました。ユキトの将来に見通しが立ち、私の性格も明るくなったような気がします。たくさんの友達に会って、ユキトを紹介しました。

 

Q.10月に後輩が入ってきたことで、3、4歩自分で歩けるようになりましたが、その後の成長はどうでしたか?

A.ユキトは、捕まり立ちを始めて2年、つたい歩きを始めて1年半くらい経つのですが、まだ1人では歩けませんでした。みんなに「もうすぐ歩く、もうすぐ歩く」と言われ続けたものの、まだ少し時間が掛かりそうでした。医師と理学療法士の先生が、直接ユキトのために今後の訓練について話し合いをしてくれました。ユキトは心臓に小さい穴はあるものの、それ以外の内臓疾患はありません。一般的には、内臓疾患のないダウン症児は2、3才で歩き始めるそうなのですが、ユキトはまだでした。

 

10月は次年度のクラス決めの時期、歩けるようになる?

Q.10月は次年度のクラス分けを決める時期ですね。

A.はい。だいたい10月ごろから、来年度のコースを担任の先生と話し合います。10月ごろはまだユキトが歩けなかったので、来年も歩けないコースに通うのかな?と、思っていました。でも、11月ごろからつたい歩きを自らどんどんするようになり、これはひょっとしたらもうすぐ歩けるようになるかもしれないと思い、ワクワクしながら様子を見守っていました。結局、歩けないまま12月の誕生日を迎えて4歳になり、来年4月からのクラスも今までと同じ歩けないコースになりそうです。

 

Q.できれば歩けるコースへ行かせたいという気持ちはありましたか?

A.来年度の途中に歩けるようになる可能性があるなら、4月から歩ける子のコースに行かせたいと私は思っていました。ユキトよりも発達が早く、歩いたり走ったりできる子どもたちと一緒にいた方が、ユキトも刺激を受けて早く歩けるようになるかもしれないと思ったからです。でも1人で歩けない状況で、歩けるコースに進級することはできません。それならせめて、年度の途中から歩けるコースに変えてもらえないかと先生に相談しました。すると担任の先生は、ユキトの「遠城寺式発達検査」の結果を見せてくれました。

 

遠城寺式発達検査で分かった、ユキトくんの発達バランス

Q.遠城寺式検査とはどんな検査ですか?

A.遠城寺式検査は、移動運動、手の運動、基本的習慣、対人関係、発語、言語理解などの分野別に行なう発達状態検査です。ユキトも療育手帳の申請時などに、病院や児童相談所で検査を受け、幼稚園でもチェックしていただいていました。ユキトは生まれたときから耳が悪く、1歳過ぎて手術をするまでほとんど音が聞こえなかったので、発語や言語理解が遅れているのは分っていたのですが、検査結果を見ると対人関係の発達もかなり遅れていました。

ユキトは私がママということは分かっているようですが、全くあと追いをしませんし、私がいなくなって泣かれたことも1度もありません。誰に抱っこされてもニコニコと笑います。またお友だちにもあまり興味を示しません。こういった反応はユキトの性格で、大人しく優しい穏やかな性格だと、私は思っていたのです。しかしこれは性格ではなく発達の遅れで、コミュニケーション能力が未発達ということも分かってショックでした。

 

バランスのよい発達を促すことが必要

Q. 歩ける子のコースへ行くには、移動運動など身体的能力だけでなく、コミュニケーション能力の発達も必要だということですね。

A.はい。歩けるかどうかの判断と平行して、まずユキトとママの関係作りから始めましょうと言われました。コミュニケーション能力を育て、ママとの関係、外の大人たちとの関係、お友だちとの関係を深めて、バランスよく発達を促して行く必要があるということでした。

クラス分けは単に歩けるかどうかだけでなく、活動内容のレベルが違うと説明を受けました。単に歩けそうだからそちらのコースへ入れるわけではなかったのです。今はママとの関係を深めるところから、歩けるコースの見学をするということになりました。

 

ダウン症の基礎知識32:成長に合った学びの環境を選ぼう

ユキトくんが以前通っていた2歳児コースでは、周りに歩ける子が多く、食事のスピードも合わず、ナナさんもユキトくん自身も苦労していました。その後、4月から別の幼稚園で「歩けない子のコース」に入ったことで、以前の幼稚園よりもユキトくんの状態に合ったきめ細やかなサポートを受けられるようになり、その結果、食事が徐々に食べられるようになったり、後輩から刺激を受けたことで、つたい歩きができるようになりました。子どもの成長スピードには個人差がありますが、その子の状態に合ったサポートを受けられると徐々に成長していけると言えるでしょう。次年度の進級について、先生たちがナナさんへしてくれたアドバイスは、身体能力だけでなく、ユキトくんのさまざまな成長のバランスを見るということでした。親はどうしても焦ってしまいがちですが、サポートしてくれる先生などの識者の意見を参考にしながら、子どもの学びの環境を考えていく必要がありそうです。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。