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【二十四節気12】澄み渡る青空、穀物の収穫、食欲の秋本番「寒露」

1年間を24の季節に分けた「二十四節気」で、「秋分」の次は草木の露が凍り始める「寒露(かんろ)」です。今回は、見ごろとなる「菊」、旬の魚「鯖(サバ)」、日本の感謝祭「神嘗祭(かんなめさい)」を紹介します。新米、柿、栗、サツマイモ、キノコの旬がやってきて、脂の乗ったサンマやサバなどの青魚も出回り、秋の味覚を楽しめる時期。また菊まつりでは、見事な大輪の花や菊人形などが展示され、秋の行楽シーズンが到来します。

 

秋晴れが続き、霜が凍り始める「寒露」は10月8日から

「寒露」とは、初秋にかけて野草に宿る冷たい露のことを言います。秋の雨も次第に終わりに近づき、草木の露が朝晩の冷え込みで凍り始め、グッと秋が深まるころですね。二十四節気では「秋分」の次にやってくる時季で、2017年は10月8日から始まります。農家では、米、麦、大豆などの穀類が収穫シーズンを迎え、大忙しの日々がやってきます。また大気の状態が安定する時季で、空を見上げれば澄み渡る青空が広がり、秋晴れの「運動会日和」が続きます。秋晴れの空には、日本で夏を過ごしたツバメや、冬を過ごしにやってくる雁などの渡り鳥が、列をなして悠然と飛ぶ姿を仰ぎ見ることができます。

 

日本のシンボル、菊は延命長寿の花

「寒露」の時季は、菊が見ごろを迎えます。菊は、桜とともに日本を象徴する花で、歌に詠まれたり慣れ親しまれている花ですね。10月には「菊まつり」が各地で開催され、見事な菊がズラリと並び、戦国武将や時代の人をモチーフにした菊人形が展示されます。また古代中国において、菊は延命長寿の花とされ、菊茶や菊花酒、漢方薬として飲まれていました。なかでも「食用菊」は、観賞用のものより苦味が少なく、甘味を感じるのが特徴です。日本への食用菊の伝来は奈良時代に遡ります。紫色の「延命楽」は各地で栽培され、「もってのほか(山形県)」や「カキノモト(新潟県)」とも呼ばれます。お刺身の上に乗った黄色い小菊「つま菊」も、食用菊の1つです。

 

家族そろって食べよう!青魚の王様「鯖(サバ)」が旬

「鯖(サバ)」は日本各地の太平洋沿岸で獲れ、今が旬のものを「秋サバ」と言います。春に生まれたサバはエサを求めて北上し、9~10月ごろになると産卵のために再び南へ戻ります。南下するサバは、身が締まっていながらも脂が乗った風味の良い、絶好の食べごろを迎えます。また、九州沿岸で水揚げされるサバは冬が旬となるため、「寒サバ」とも言われます。サバは、魚へんに「青」と書くことからも分かるように青魚の仲間で、血液をサラサラにしたり、脳の働きを活性化するDHAやEPAも多く含まれます。定番の塩焼きや味噌煮のほかに、子どもたちの好きなカレー風味も合いやすく、家族みんなで食べたい魚です。

 

 

昭和までは祭日だった、五穀豊穣を感謝する「神嘗祭」

10月に入ると、五穀豊穣を感謝する秋祭りが各地で行われます。五穀とは、米、麦、粟、黍(キビ)に、稗(ヒエ)あるいは豆を加えた5種類の穀物を指します。古来日本では、五穀豊穣の感謝祭として、天皇がその年に初めて収穫した稲の穂を天照大神へ奉納する儀式、「神嘗祭(かんなめさい)」が行なわれていました。旧暦を用いていた時代は9月17日に「神嘗祭」を行なっていて、1873年に太陽暦を採用してから、新暦の9月17日に日程が変更されました。ところが新暦の9月中旬は、稲穂がまだ十分に育っていないため、1879年からは1月遅れの10月17日が神嘗祭となりました。ちなみに、神嘗祭は皇室の主要な祭祀が行なわれる日として1873年から祭日に制定されていましたが、1947年の皇室祭祀令の廃止によって祭日も廃止され、神嘗祭も祭日ではなくなりました。

 

寒露の次は、霜が降り秋の山が色付く「霜降(そうこう)」

寒露を過ぎ、山の木々が濃い黄色や紅色に染まり始めると、二十四節気は次の「霜降(そうこう)」へ移ります。場所によっては霜が降り始め、沁みるような寒さを感じることもある時季がやってきます。次回は、お月見「十三夜」についての習わしと、ちょっと早めの“食べる冬支度”についてご紹介します。お楽しみに!

 

 

高橋尚美

愛知県の渥美半島生まれ。東京での会社員生活から結婚出産を経て、2009年に夫の実家がある岐阜市へ。几帳面な戌年の長女、自由奔放な子年の次女、愛嬌いっぱいの辰年の三女を育てる母ライフを満喫しつつ、qufourのリサーチ記事や地元で発行している食育冊子の記事を執筆しています。