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【ダウン症児と私38】母子時間が増えたら、コミュニケーション能力に変化

弟・マサトくんの保育園入園をきっかけに、ユキトくんと2人の時間を意識的に増やしたナナさん。今回は、ユキトくんのコミュニケーションが変化していったころのお話を伺いました。また幼稚園では、秋からのコースも決まったようです。

 

自分からママへすり寄り、声を出して笑うように

Q.保育園の先生から、コミュニケーション能力の発達には、まずママとしっかりした関係を作ることが大切とアドバイスを受けて、ユキトくんと2人で過ごす時間を増やしましたが、どんな風に過ごしていたのですか?

A.まずは、今まで週に2、3回通っていた児童デイサービスを、10日に1回程度にセーブして、ユキトと2人の時間を意識的に作りました。弟が保育園に行っている間は家で2人きりで過ごせるようになりました。2人だけで遊ぶ時間は、今までほとんど取れていなかったので、毎日いっぱい遊んで、おもいっきり甘えさせて、スキンシップもたくさんしました。すると、2カ月が過ぎたころから、ユキトの方から私へすり寄ってくるようになりました。さらに、ユキトは声を出してよく笑うようになり、表情が豊かになりました。日に日にママにすり寄ってくる時間が多くなったので、びっくりしました。

 

Q.ママを認識し始めたのですね。幼稚園ではどうでしたか?

A.幼稚園では、先生やほかのママたちにも甘えに行くようになり、先生も驚いていました。そのうちに、お友だちのところへも自分から行くようになりました。でも、お友だちの上に乗ったり、髪の毛を引っ張ったりするので、かえって目が離せなくなりました。家でも毎日弟の上に乗っかって遊び、髪を引っ張ったり、噛んでしまうことも出てきてしまいました。

 

お友だちをの髪を引っ張ったり、噛んだりする日々

Q.ママだけでなく、ほかの大人や友だちにも興味をもったのは嬉しいことですが、お友だちの髪を引っ張ったりするのは心配ですね。何か問題は発生しませんでしたか?

A.ユキトがお友だちに興味を示すようになってから、幼稚園ではほかの子の髪を引っ張らないように、噛んでしまわないようにと、ユキトから目が離せなくなりました。毎回ちゃんとユキトを見ていたつもりなのですが、あるとき幼稚園で、パラバルーンを使って遊ぶ時間がありました。私は布の中にいるユキトを外から見守っていましたが、なんとユキトは私から見えない大きな布の中で、お友だちの足の薬指と小指を強く噛んでしまったのです。しっかりと歯形が付いてしまい、そのお友だちは泣いてしまいました。すぐに担任の先生に伝え、わたしはその子とママに謝りました。

 

Q.そんなユキトくんの変化を、保育園の先生はどう感じてくれましたか。

A.担任の先生は、そんなユキトのことを、「ユキトくんは遊ぼうと言ってるんだよね。コミュニケーションが取れるようになったんだよ。成長してきているんだよ。すごいね」と誉めてくれました。しかし、成長過程の出来事とはいえ、友だちの髪を引っ張らないように、そして噛みつかないように、ずっとずっと見ていなければならないかと思うと、正直大変でした。

 

秋からも、このまま歩けない子のコースへ

Q.秋までに、ユキトくんが歩けるようになったら、歩けるコースへ移りたいと希望されていましたが、結果はどうなりましたか?

A.春からの目標は、3つありました。「コミュニケーションが取れるようになる」「先生の絵本や紙芝居が見られるようになる」「まねっこ遊び、模倣するようになる」の3つです。年中になる前、先生には3つの目標をクリアしたら、秋からは歩けるコースに入れてほしいと頼んでいました。6月には、友だちへ興味を示すようになり、コミュニケーションは目に見えて取れるようになりましたが、先生に注目したり、模倣は全くできませんでした。絵本や紙芝居が見られない今の状態では、歩けるコースの難しい絵本や紙芝居に着いていくのに苦労することは明白でした。ユキトのためには、分かりやすい絵本を読んでもらえる今のコースで慣れさせる方がいいと思うようになり、10月以降も、このまま歩けないコースを続けたいと園長先生と担任の先生に伝えました。

 

Q.とはいえ、少しでも歩けるように、成長をサポートするために、心がけたことはありますか?

A.歩けないコースでは、教室におまるを置いて座る練習をしますが、歩けるコースでは教室から離れたトイレまで歩いて行きます。ユキトは伝え歩きができていたので、トイレまで歩く練習も兼ねて、手を繋いで一緒に歩いて行くことにしていました。また歩けない子は昼休みは教室で遊ぶのですが、歩ける子たちと一緒に遊んだら、ユキトも刺激をもらって早く歩き始めるかもしれないと、ホールまで行って歩ける子たちと一緒に遊ばせるようにしました。積極的に歩くように促したことで、ユキトはハイハイや伝え歩き、独歩もできるようになり、とても嬉しくなりました。ユキトももう4歳半なので、1日でも早く歩いて欲しいなと思います。そして次のステップでは、絵本やお話を聞けるようになり、ゆくゆくは模倣やお話ができるようになれればいいなと思います。

 

ダウン症の基礎知識38:積極的に周囲の刺激を受ける環境へ

ママとの関係作りをしっかりするようにとのアドバイスを受けて2カ月。目に見えてコミュニケーションが取れるようになったユキトくんは、活発な反応を示すようになりました。歩けるコース、歩けないコースという区分にとらわれていたナナさんも、次のステップへ進むために、積極的に新しいことにチャレンジして、周りから刺激を受けられる環境にユキトくんを連れ出しています。喋れない子でも、いろいろな刺激を受けていれば、状況や関係性を理解するために、頭の中は動いていくのです。ママにとってはもどかしい状況が続きますが、これまでの積み重ねでできるようになったことへ目を向け、本人が変化するための手助けを続けていくことが重要ですね。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。