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【ダウン症児と私42】言語聴覚士の先生との面談で、発語への課題を確認

4歳半になったユキトくんですが、言葉によるコミュニケーションはまだまだという状況です。今回は、福祉幼稚園で言語聴覚士の先生の個別面談を受けて、今後の課題を確認したときのお話を伺いました。言語を使ったコミュニケーションの訓練は、子どもたちの発達状況に合せてスタート時期を見定め、ほかの訓練と総合的に進める必要がありそうです。

 

言語療法は、いつから始めるべきか

Q.これまで、言語療法を行なう言語聴覚士の先生へ、ユキトくんのことを相談したことはありましたか?

A.今回の個別面談が初めてでした。言語療法は、コミュニケーションや飲食に必要な機能の障害をリハビリしていく療育です。ユキトが通っている福祉幼稚園では、言語療法を行なう言語聴覚士の先生か臨床心理士の先生へ、年に1回の個別面談を受けることができます。以前、ほかの障害児のママから言語療法へ通っていることを聞き、まだ喋れないユキトにも早く受けさせたいと思っていました。そこで毎月通っている療育施設で相談してみたのですが、そのときはまだ早いと言われてしまいました。そう言われるとますます不安になり、ほかの先生にも聞いてみましたが「言語療法は、その子の発達状況をみてスタートするもの」というお話で、「ユキトくんは作業療法と理学療法をしっかりやってまずは食べることと歩くことを頑張ってから、言語療法の相談をした方がいいかな」と言われてしまい、言語聴覚士の先生とお話するには至りませんでした。なので、今回の個別面談はありがたく、とても楽しみにしていました。

 

話せなくても、歩けることで好奇心が出てきたユキトくん

Q.年中のユキトくんの発語は、どんな状況でしたか?

A.そのころユキトは、まだ単語どころか喃語(なんご)も出ていませんでした。産まれた時から滲出性中耳炎で、1年以上も聞こえない状態で過ごしたので、ほかの子どもよりも言葉が遅いのは覚悟していたのですが、ダウン症の親の会で集まった同級生のお友だちは、だんだんと「ママ」「ごはん」「ちょうだい」などの単語が出ていたので、とてもうらやましく感じていました。同じ福祉幼稚園に通う同級生は、2歳ごろからしっかりごはんを食べて、歩くのも走るのも上手です。でもユキトは、まだ柔らかいものを食べるのがやっとで、歩くのも5~6歩程度。「話せるのはまだまだ先かなあ?」「いつか話してくれるのかな?」「どれくらい先なのかな?」と、私の頭のなかは期待でいっぱいになってしまい、心配になっていました。

 

Q.歩けるようになって、周囲への興味や関心に変化はありましたか?

A.春ごろから独歩を始めて、まだ5~6歩しか歩けないユキトですが、少しでも1人で歩けると、動くことがだんだんと好きになっているように見えました。意欲的に体を動かしてイスの上へ登り、あっという間にテーブルの上へ登ります。戸棚の上へ登ったこともあり、びっくりしました。春以降の運動能力の発達は日々目覚ましく、動くことへの意欲がすごく高かったと思います。回りの人への興味や関心も示すようになり、言葉はありませんが表情や仕草で積極的にコミュニケーションを取るようになっていました。

 

言語聴覚士の先生との面談で、今後の課題を確認

Q.言語聴覚士の先生との面談は、どんな感じでしたか?

A.言語聴覚士の先生とは、幼稚園の相談室でお会いしました。ユキトは相談室に入ると、初対面の先生なのに、すごいスピードでヒザの上へ登っていったので、私はびっくりしてしまいました。そして、いっぱい抱っこしてもらって、べったり甘えていました。そんなユキトに、先生はとても優しくしてくださり、ボールや鈴、積み木などのおもちゃを出して、ユキトがどんな風に遊ぶのかを20分ほど、チェックしてくれました。

 

Q.ユキトくんを観察した先生と、どんなお話をしましたか?

A.言葉が出てくるようになるためには、「コミュニケーション」「単語の意味の理解」「発音」ができることが必要になります。まずコミュニケーション能力をアップさせるには、具体的には、以下の4つのことを続けていくことが重要だと教えていただきました。

 

  1. もう1回
  2. まねっこ遊び
  3. ちょうだい、どうぞ
  4. たくさんほめる

 

この項目は、「ユキト君はコミュニケーション能力が未発達だから、これから頑張りましょう」と、幼稚園の先生から言われていた課題と一致していたので、びっくりしました。今回、言語聴覚士の先生とお話したことで、コミュニケーションの重要性を再認識しました。まずはコミュニケーションを図るために、遊びのなかで楽しいという気持ちを育て、通じ合っているという喜びを感じ合っていこうと思いました。また、豊かな体験や経験を重ねて行くことも大切なので、いろいろな物に触れたり、体を使った遊びもどんどんやっていこうと思いました。

私は、作業療法、理学療法、言語療法は別々の訓練だと思っていましたが、それぞれの訓練が総合的に積み重なって発達していくと分かったので、バランスの良い発達を促すためにも、苦手なこともストレスにならない程度に頑張っていこうと思いました。

 

ダウン症の基礎知識42:言語聴覚療法士

言語聴覚療法士は、言語や聴覚、発音、発達、摂食などに関わる障害に対して、検査と評価を実施し、訓練や指導、支援を行なう専門職です。STと呼ばれることもあり、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、視能訓練士(ORT)とともに、さまざまな場面で活躍しています。2016年現在、言語聴覚療法士の国家資格試験の累計合格者は27,000人を超えていて、人口10万人あたり21.5人いる計算です。多そうに見えるこの数字ですが、アメリカには人口10万人当たりの有資格者が53.9人いることと比較すると、多いとは言えない状況です。都道府県によって有資格者の人数に偏りがある現状も考えると、もっと多くの人が専門職として活躍してほしい状況が伺えます。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。