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[聴こうクラシック21]歌詞を想像してみて!メンデルスゾーン「春の歌」

あやふくろう(ヴァイオリン奏者)

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やっと春めいた気候になってきましたが、春を心待ちにする気持ちは、200年前も今も同じ。今回は175年前、メンデルスゾーンが作曲したピアノ曲、無言歌集作品62-6より「春の歌」をご紹介します。

 

幼少期から作曲の才能を開花させた神童

ヤーコプ・ルートヴィヒ・フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディは1809年、ユダヤ系の裕福な銀行家の息子としてドイツのハンブルグに生まれ、1847年に38歳の若さで急死しています。母親がバッハの弟子にピアノを習っていた影響で幼いころからピアノを習い、作曲の才能を開花させ天才少年と騒がれます。メンデルスゾーン13歳のときに隔週で「日曜音楽会」が自宅で開催されるようになり、彼は自作の曲を次々と披露していきます。それがたちまちに評判になり、世界中の音楽家が参加する大規模な音楽会となりました。その後、各国で音楽を学びその才能をさらに開花させていったのです。

 

 

文学と音楽という垣根も、年の差も超えた友情

メンデルスゾーンには、生涯に大きな影響を受けた2人の友人がいました。1人はメンデルスゾーン12歳のときに出会った、当時72歳のドイツの文豪、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテです。ゲーテは彼の才能にほれ込み、「魔法使いのホウキが厳粛な楽譜の上を飛び回れるのなら、君もそれにまたがってごらん!もっと広い音の世界をかけ巡ってもっともっと楽しませておくれ、力一杯やり終えた時、またここに戻ってきておくれ(「メンデルスゾーン : 美しくも厳しき人生」より)」という詩を贈ったほどでした。2人の友情は、メンデルスゾーンが23歳のときにゲーテが亡くなるまで続きます。

 

音楽を通じて刺激しあう、同年代の友

もう1人は、メンデルスゾーン22歳のときに出会った、ピアノの詩人と言われたフレデリック・フランソワ・ショパンです。メンデルスゾーンは、ポーランドからパリに亡命してきたばかりで1つ年下のショパンの良い相談相手になっていました。メンデルスゾーンは、ショパンによって1台のピアノが紡ぎ出す表現の可能性を知り、大きな刺激を受けたのです。

 

生涯作り続けたピアノ独奏曲集「無言歌集」

メンデルスゾーンは20歳のとき、独自のスタイルのピアノ独奏曲集「無言歌集」を作曲し始めます。その数は各6曲合計8集、全部で48曲にもなります。「無言歌」という題名を最初に付けたのは、作曲家だった姉のファニーという説もありますが、子どものころに言葉の魔術師・ゲーテに出会ったことで、言葉を超えた音楽の表現に挑戦するために「無言歌」を作り続けのたかもしれません。無言歌集は、楽譜が出版されると毎回大人気となり、女性たちが争うように買ったそうです。

「春の歌」は、1842年に作曲され、無言歌集第5巻に収録された3分弱の曲です。出版された楽譜のなかで、今でも一番有名なのが「春の歌」です。「春の歌」の特徴は、伴奏部で連続する細かい「ポロロン」という音です。この装飾音で春風のようなすがすがしさが表現されています。そして、メロディはハミングのように爽やかです。「春の歌」は、彼の交響曲「イタリア」と同じくイ長調。メンデルスゾーンはイタリアの温暖な気候を気に入っていたようなので、イ長調には春の暖かいイメージをもっていたのかもしれません。

 

平和で明るい家庭生活を満喫しながら、作曲

メンデルスゾーンは28歳のときに結婚。32歳のとき、プロイセン王立宮廷楽団長の地位が与えられ、5人になった家族を引き連れてベルリンの実家に戻りました。メンデルスゾーン家が20年前から自宅で開催していた「日曜音楽会」に彼も参加できるようになり、彼を目当てに有名人が次々と訪れました。実家は昔のような華やぎを取り戻したのです。父親はすでに亡くなっていましたが、寂しく過ごしていた母親を喜ばせることができました。実家に戻った翌年、子どもたちと過ごしたり、スケッチ画を楽しんだり、音楽以外にも満ち足りた日々のなかで、「春の歌」を作曲します。その年のクリスマス前に母親が他界しますが、各国で活躍して戻ったメンデルスゾーンは、親孝行もできましたね。

 

おすすめの演奏

 

ドイツ人ピアニスト、ヴァルター・ヴィルヘルム・ギーゼキングの晩年、1956年のレコーディングです。ギーゼキングは蝶の標本収集が趣味だったピアニストで、政治には関心がありませんでした。しかし、ユダヤ系だったために大戦中に迫害を受けたメンデルスゾーンの曲を、ドイツ人である自分が演奏することで、彼の作品の真の芸術的価値を戦後の世界に示したかったのかもしれません。

 

参考文献

「メンデルスゾーン : 美しくも厳しき人生」ひのまどか著 リブリオ出版
「大作曲家たちの履歴書」三枝成彰著 中央公論社
「僕のショパン」桃雪琴梨著 角川グループパブリッシング
「吉松 隆の調性で読み解くクラシック」吉松隆著 ヤマハミュージックメディア

 

◇前回記事◇[聴こうクラシック20]平昌五輪、宇野・銀メダル「誰も寝てはならぬ」
https://qufour.jp/article/detail/3617

◇あやふくろう(ヴァイオリン奏者)さんの過去記事一覧
https://qufour.jp/users/article/41058

 

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あやふくろう(ヴァイオリン奏者)さん

ヴァイオリン奏者・インストラクター。音大卒業後、グルメのため、音楽のため、世界遺産の秘境まで行脚。現在、自然とワイナリーに囲まれた山梨で主婦業を満喫中。富士山を愛でながら、ヨガすることがマイブーム。

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