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[二十四節気24]桜咲き、草木の芽吹く清々しい節気「清明」は、4月上旬

1年間を24の季節に分けた「二十四節気」で、「春分」の次は清々しい春の光がまぶしく草木の芽が萌える節気「清明(せいめい)」です。今回は、清明の由来や習わしと「桜」にまつわるトリビアをご紹介します。受験で志望校に合格すると「サクラサク」と表すように、桜はおめでたいことのシンボルとして使われることが多いですが、かつて縁起が悪いものと考えられていた時代もあったようです。

 

桜が咲いて草木が芽吹く、生命の息吹きを感じる「清明」

清明は、桜の開花や日差し、ウグイスの鳴き声などから春の訪れを感じ、新しい生命の息吹を感じる「春爛漫」の時季です。1787年の暦便覧には「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」と書かれています。野山で草木がいっせいに芽吹いたことで、どれが何の木か明らかになる清々しいころという意味で、この「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」を省略したのが清明です。桜の花が咲きほころび、草木が芽吹くなかを蝶やハチが飛び交い、越冬していたツバメが南方から渡ってきて軒先に巣作りを始めます。2018年の清明は4月5日から4月19日まで続きます。

 

祖先の墓を掃除してお参りする、中国の年中行事「清明節」

中国には、日本のお盆に相当する「清明節」という行事があります。この日は、先祖代々が眠る墓にお参りし、墓をきれいに掃除して周辺の草むしりをします。死者を弔う日ですが、あの世の者とこの世の者が境界を越えて賑やかに交感する日で、墓前に供えた食べ物や花を囲んで陽気でほがらかな宴を楽しみます。そのため、清明節は花見気分の墓参りと、若草を楽しむ小旅行の日と位置付けられています。また、中国から沖縄へ伝わった清明節は、今でも先祖供養のしきたり「清明祭(シーミー)」として、先祖が眠る墓の前に家族や親族で集い、掃除と草刈りをしてから墓前にゴザを敷いてごちそうを食べる習慣が残っています。

 

桜が付く食べ物や飲み物、桜を使うものと使わないもの

桜は見るだけでなく、食べたり飲んだりする楽しみもあります。代表的な和菓子「桜餅」は、関東と関西で餅の作り方が違いますが、どちらも塩漬けにした桜の葉を巻きます。詳しくは、【和菓子歳時記】でご覧ください。また、塩漬けにした桜の花は、白餡へ練り込んだ「桜団子」やお湯へ浮かべて「桜湯(桜茶)」などに使われます。一方、桜を使わないのに「桜」の名が付く食べ物もあります。例えば、地域で異なるものの一般的に醤油で炊いた具のないご飯のことを「桜飯」、馬肉のことを「桜肉」と言います。桜肉の由来は諸説あり、肉の色が桜色だという説、桜の咲くころが食べごろという説、江戸幕府の馬牧場が現在の千葉県佐倉市にあって「馬といえば佐倉(サクラ)」という説、仏教で肉は忌み嫌ったためイノシシ(牡丹)、シカ(紅葉)と同様に隠語で呼んだとする説などがあります。

 

【和菓子歳時記18】日本の春を感じるお菓子「桜餅」、桜葉の香りの秘密
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1162304.html

 

桜は「縁起が悪い」とされていた時代もあった

今では、「桜湯」を結納や結婚式などお祝いの席で出したり、受験で志望校に合格すると「サクラサク」と言ったりするように、桜はめでたさのシンボルとして親しまれていますが、かつては縁起の悪いものでした。江戸時代の始めごろまでは、桜湯どころか桜の季節に結婚式をあげることも避けられていたのです。というのも、桜は咲いたらすぐ散ってしまううえ、散った花もすぐ色褪せてしまうため「心変わり」と考えられ、これを表す「桜ざめ」という言葉もあります。しかし、江戸中期以降から「桜咲く」が「めでたい」というイメージへと変わり、縁起が良いとされるようになりました。また、おめでたい席でお茶を出すのは「お茶を濁す」「茶々を入れる」を連想するため、これを避けて「桜湯」の出番が増えたとも言われています。

 

二十四節気で季節を感じる生活を楽しもう

今回の「清明」で二十四節気がひと回りし、1年を通してそれぞれの由来や古くから伝わる習わし、旬の食べ物などご紹介してきました。現代の暮らしは、1年中欲しいものが手に入って便利で快適に過ごせる一方、季節の移り変わりを感じにくいとも言えますね。こういう時代こそ改めて、二十四節気で季節の移り変わりを意識して、日々の生活に取り入れて楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

高橋尚美

愛知県の渥美半島生まれ。東京での会社員生活から結婚出産を経て、2009年に夫の実家がある岐阜市へ。几帳面な戌年の長女、自由奔放な子年の次女、愛嬌いっぱいの辰年の三女を育てる母ライフを満喫しつつ、qufourのリサーチ記事や地元で発行している食育冊子の記事を執筆しています。