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[ダウン症児と私52]年に2回の「支援計画」を見返して、成長を確認

新学期を迎えた春、ナナさんは福祉幼稚園で担任の先生と目標設定や課題共有に使ってきた「児童発育支援計画」を見返しました。今回は、これまでの「支援計画」を振り返って、ナナさんが感じたことを伺います。2歳のときに初めて通った福祉幼稚園では、周りの歩けるお友だちについていくだけで精一杯でしたが、年少さんになって通い始めた新しい福祉幼稚園では、少しずつできることへ目を向けられるようになりました。

 

福祉施設を利用するための「支援利用計画」

ユキトは、福祉の幼稚園に通っています。福祉施設を利用するにはまず、「サービス等利用計画・障害児支援利用計画」を施設の担当者に立ててもらいます。これは、障害福祉サービスなどの利用を希望する障害者について、援助や療育の方針、解決すべき課題などを踏まえて、指定相談支援事業者である福祉の幼稚園が作成する総合的な支援計画です。利用者は、支援計画の作成費用を負担する必要はありません。また作成された支援計画の内容はモニタリングを行ない、一定期間ごとに見直しされます。ユキトは半年に1度、この計画を見直ししてもらっていて、その都度、療育・支援についての具体的な内容を話し合い、個別の支援計画表を作成してもらっています。ユキトは福祉の幼稚園のほかにデイサービスも利用していますが、相談員の先生がデイサービスにも電話してくださり、話し合って総合的な支援計画を立ててくれます。

 

幼稚園の担当の先生と作る「児童発達支援計画」

相談員の先生が立ててくれる「サービス等利用計画・障害児支援利用計画」とは別に、半年に1度、担任の先生と「児童発達支援計画」を立てます。2歳のときに通い始めた最初の福祉幼稚園での目標は、「場所に慣れましょう」「元気に通いましょう」というところから始まりました。計画が、保護者からの要望も取り入れたうえで立ててもらえます。私はこのとき、「いろいろな人と交流して欲しい」「固形の食事や水分を少しでも多く取れるようになって欲しい」という目標を伝えていました。ですので、長期的目標は「お母さんや先生と園の生活を楽しみましょう」、短期目標は「園の生活に慣れましょう」「お母さんと一緒にスキンシップを楽しみましょう」の2つに決まりました。

 

一生懸命だった最初の幼稚園の1年間

残念ながら、最初の幼稚園では1年経ってもまだ固形の食事を取れるようにはなりませんでした。ユキト以外はみんな歩ける子ばかりだったので活動についていくことができず、何をするにもいつも最後でした。例えば、教室からホールに移動する場合、私はユキトを連れて誰よりも早く教室を出発して、歩けないユキトを一生懸命つたい歩きで歩かせ、無理やり引っ張り、ときには引きずってでも同級生の友だちに追い付こうとしていました。しかしすぐに、あとから来た子に1人抜かれ、2人抜かれ、結局全員に抜かれてしまう毎日でした。でも、一生懸命頑張っていたことを思い出します。

 

新しい幼稚園でのびのびと

年少からは、別の福祉幼稚園に通うようになり、発達段階が似たようなお友だちと過ごせたことで、私はとても安心して通うことができるようになりました。ここでの長期目標も楽しむことを主眼に「お母さんと一緒にクラスの活動を楽しみましょう」となり、短期目標は「食事を楽しみましょう」「親子でさまざまな遊びを経験しましょう」「新しい環境に慣れ、元気に登園しましょう」の3つになりました。さらに、それらの目標に、細かくどんなことをしていくかを、担任の先生が詳しく説明して書き込んでくれました。

 

  • 食事を楽しみましょう:給食のさまざまな食材やメニューに自発的に触れていきます。お母さんとゆったり向き合いながら、好みや食べやすい大きさ、固さ、介助方法を探っていきます
  • 親子でさまざまな遊びを経験しましょう:さまざまな遊びを無理なく経験していきます。体操、リズム運動、サーキット遊びなどを通して、いろいろな物に合わせた動きや揺れ、傾きを経験して自分の身体に気付き、動きの幅を広げていきます
  • 新しい環境に慣れ、元気に登園しましょう:お母さんと一緒に通いながら、場所、クラスの先生やお友だちにも少しずつ慣れていきます。集会や体操、さまざまな取り組みを繰り返し行うなかで、好きな遊びや活動を探っていきます

 

食事・遊び・社会性それぞれに、少しずつ変化が見られた半年

年少前半の「児童発達支援計画」の評価では、短期目標に挙げた「食事」「遊び」「社会性」にそれぞれ変化が見られました。

 

  • 食事:学園の豆椅子に座ってさまざまな食材を食べることができました。味がしっかりしていれば潰していない7mm角の野菜も舌で押し潰し、噛む様子も見られました。水分もスプーンから飲めるようになりました
  • 遊び:ローラー滑り台の強い刺激を楽しむだけでなく、物に合わせて身体の方向を変え、上手に動いて楽しんでいました。カップタワーを重ねたり、出し入れしたりとおもちゃで遊び込む時間も増えました。ハイハイや高這いで目標に向かって移動し、つたい歩きで2m移動したり、その場で立つこともできています
  • 社会性:回を重ねる度に、集会や絵本への期待や注目度も高まりました。くすぐられるのを期待して笑ったり、絵本と分ると、自分から席の近くに戻って来ることもあります。同じ遊びでも、環境が変わり警戒してしまうこともありましたが、大人が待つことで納得できると、自分から参加する場面が増えました。

 

年少で通い始めた福祉幼稚園の歩けない子のコースでは、ユキトのペースに合わせてしっかり療育することができていると感じました。給食も始まり、柔らかい給食を先生方がさらに潰してくれて、だんだんと食べられるようになり、嬉しくなった時期でした。

 

こうして、半年ごとに目標を立てて評価してもらえるので、子どもの成長発達や介助のやり方も分かりやすく、とても助かっています。次回は、年少の後半から年中にかけての目標と評価の振り返りの内容をご紹介します。

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。