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[ダウン症児と私60]弟の感染症で手術延期、さらにユキトくんも感染症に

小さな子どもの体調不良は、気を付けていても避けられないものですね。今回は、ユキトくんの弟、マサトくんが保育園で流行った感染症にかかってしまい、看病と家庭内感染対策に苦労したときのお話を伺いました。ユキトくんの大事な手術の予定も延期することになり、さらにはユキトくんが別の感染症になってしまい、ナナさんはますます大変な毎日を過ごすことになってしまいます。

 

ユキトの手術直前、弟が保育園で「手足口病」に感染

ユキトは以前から「移動性睾丸」と診断されていて、5歳の7月に睾丸をきちんと陰嚢へ固定する手術を受ける予定でした。そのため手術の1カ月前には、事前診断を受け、手術や麻酔の説明や注意点を聞き、万全の状態で手術を待っていたところでした。ところが手術4日前の夕方、弟のマサトの手足にブツブツが出たので小児科へ行くと、「手足口病」と診断されてしまったのです。手足口病は、感染から発症まで時間が掛かります。ユキトは、マサトの手足にブツブツが出た日の朝まで、一緒に遊んでいました。手術前のユキトが感染してはいけないと、私は2人を引き離すために、ユキトをあわてて義母へ預けました。

 

入院・手術は、2カ月延期に

そしてすぐに病院へ電話すると、兄弟を完全に隔離するように言われました。そして手術ができるかを確認してもらうために、ユキトを連れて病院へ行きました。手足口病の場合、感染者と完全に隔離して、最後の接触から6日経っても本人に全く症状がない場合は、入院できるそうなのですが、弟の感染が分ったのは入院の4日前だったため、結局手術は9月に延期となりました。ユキトの通っている大きな病院は、重病の子や、障害のある子もたくさん入院しているので、院内感染を徹底的に防ぐ必要があり、入院する前の感染症チェックがとても厳しいんです。入院・手術のためいろいろ準備していたので、直前に延期となったことはショックでした。

 

兄弟のどちらかが感染症に掛かると大変

兄弟の片方が感染症に掛かると、とても大変ですね。幸いにも近くに義理の両親がいるので、弟が「溶連菌」や「インフルエンザ」に掛かったときは、ユキトをすぐに預かってもらえました。でもさすがに3泊以上になると義父母も疲れるので、最後は自分で面倒をみなくてはなりません。同じ部屋に置くわけにもいかないので、2人を1階と2階に分けて、それぞれにおもちゃをたくさん出して20分ずつ交互にみます。さらに自分もうつらないようにしなければなりません。今回は、預かってくれた義父母のおかげでもあって、結局ユキトは手足口病には感染しませんでした。

 

夏、頭を引っ掻く癖が止まらなくなる

手術がなくなったころから夏に掛けて、ユキトは自分の頭をよく引っ掻くようになりました。療育の先生に相談すると、「今、ユキトくんは自分で自分に刺激を入れるのが楽しい時期なのね」と教えてくれました。頭を引っ掻くと、指や爪、頭やおでこにも触覚や痛み、かゆみなどの刺激が入ってきます。ユキトはその刺激を楽しんでいるのではないかと言うのです。刺激を楽しむのは、障害児の特性でもあるそうです。また重度の知的障害もあるので、「掻いちゃダメだよ。傷がひどくなっちゃうよ」と、注意しても分ってもらえません。

 

掻いた傷がひどくなって「とびひ」に、自宅待機へ

その後も頭を引っ掻く癖は直らず、引っ掻いた傷はどんどん広がり、血もずいぶん出てどうしようもなくなってしまったので、皮膚科へ連れて行きました。皮膚科の先生に「とびひ(伝染性膿痂疹)になってるね。お友だちにうつるといけないから幼稚園はお休みしようね」と言われ、自宅でユキトをみることになりました。

ユキトは頭の傷が痒いようで、すきがあれば頭を掻こうとします。頭を掻かないようにユキトの手を握って遊んでいましたが、例えば私がトイレに行ったりすると、すぐまた掻いてしまいます。せっかくかさぶたができても、ユキトがどんどんはがしてしまうのです。ずっと2人で自宅にいてユキトの手ばかりを見ているのは、私が辛くなってしまったので、大きな病院の皮膚科にもみてもらうことにしました。すると「こんなに毎日掻きむしっているのに、ほかの場所へうつっていないので、これは『とびひ』ではないでしょう。ユキトくんの特性で癖になってるからしょうがないね。『とびひ』ではないので、幼稚園に行っていいですよ。でもバイ菌が入っるとすぐに『とびひ』になってしまうので、注意してね」と言われました。

 

母子で幼稚園へ復帰、癖をなくすには新しく楽しいことが必要

幼稚園に事情を説明すると、頭を掻かないようにするためにママも一緒に通園をしてほしいと言われ、一緒に通うことにしました。やはり、どうしても頭のかさぶたを取りそうになるのですが、「ほかに楽しい趣味が見付かれば、この癖も止まるかもしれない」と、先生に言われました。新しいおもちゃを探しに行こうかなど、悩む毎日が続いています。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。