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[聴こうクラシック34]故人を想って聴く、フォーレの「レクイエム」

あやふくろう(ヴァイオリン奏者)

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ハロウィンは、日本で言うお彼岸やお盆に似ていて、先祖さまを弔う儀式から始まっています。今回ご紹介する曲は、亡くなった方の安息を願う、フォーレの「レクイエム」です。ハロウィーンの季節に、仮装を楽しむだけでなく、天国にいるそれぞれの大切な人を想って、音楽に身をゆだねて過ごしてみるのもいいですね。

 

由緒ある教会のオルガニストだったフォーレ

ガブリエル・ユルバン・フォーレは1845年フランスに生まれ、1924年に79歳で同国で亡くなりました。教師だった父のもとに、5男1女の末っ子として生まれた彼は、幼いころから教会のオルガンに触れ、才能を開花させます。9歳から専門的に音楽を学び、「白鳥」で有名なカミーユ・サン=サーンスにも師事しました。2人の交流は生涯に渡って続き、サン=サーンスの勤めたマドレーヌ寺院のオルガニストおよび主席ピアニストに、フォーレは51歳で就任します。マドレーヌ寺院はフレデリック・フランソワ・ショパンの葬儀が行なわれた教会としても有名で、この寺院のオルガニストは「パリのオルガニストの最高地位」とも言われていました。

 

悲しみを乗り越え生まれた代表作「レクイエム」

フォーレが40歳のとき、父親が亡くなります。この時期、彼は意気消沈し、ピアノ作品以外は作曲していません。さらに、42歳のときに母親も亡くします。「レクイエム」の第1稿は彼の母が亡くなる少し前から作曲されていました。彼はレクイエムに関して「私のレクイエムは、特定の人物や事柄を意識して書いたものではありません」と書き残してはいますが、天国にいる両親のことを思い出さずにはいられなかったのではないのでしょうか。40分弱の大作は、声楽や各楽器の織りなす天上の響きで、生ある者もいやしてくれます。

 

巧みな楽器選びで天国を表現

「レクイエム」の作曲で、おもに熟考を重ねたのは、編成に関してだと言われています。全部で第1稿から第3稿まであり、現在もっともよく演奏されているのは、55歳のときに完成した第3稿で、パリ万国博覧会でも演奏されて大成功を収めました。冒頭、低弦のDの音のユニゾンで幕を開けます。このDの音は西洋音楽ではゼウス神(Deus)のDとして、何か神々しい表現をしたいときに作曲家が用いる音です。第4曲のソプラノもしくはボーイソプラノは、まるで天使の声のような歌声で、この曲の魅力のひとつになっています。また、最後の第7曲で演奏されるハープの繊細なアルペジオとオルガンの音型は、まるで天に浮かぶ雲のようです。

 

フォーレ独自の死生観を反映した「レクイエム」

もともとレクイエムとは、カトリック教会のミサで演奏される曲で、安息とともに死の恐ろしさも表現するのが習わしでした。ところがフォーレは、死を苦しみというよりも、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた解放感と考えて作曲したので、初演時は異教徒的と批判されました。フォーレの息子の手記に、父フォーレの臨終の言葉が記されています。「……苦しんだり悲しんだりする必要はあるまい。運命だ、サン=サーンスにもほかの人たちにも起こったことさ……いつかきっと忘れる時がくるよ……なにもかも大したことではない。僕は最善を尽した……それでは神さま、お裁き下さい……※」フォーレの言葉通り、彼が生前、最善を尽くしたからこそ、今、私たちはこの天上の音楽にひたることができるのですね。

 

※「フランス音楽の11人」ロベール・ピトル著より

 

おすすめの演奏

 

 

それでは、ゆったりした気持ちで「レクイエム」を聴いてみましょう。パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団の演奏です。

 

参考文献

「吉松隆の調性で読み解くクラシック」吉松隆著 ヤマハミュージックメディア
「フランス音楽の11人」ロベール・ピトル著 音楽之友社

 

◇前回記事◇[聴こうクラシック33]チャイコフスキー三重奏「偉大な芸術家の思い出」
https://qufour.jp/article/detail/3844

◇あやふくろう(ヴァイオリン奏者)さんの過去記事一覧
https://qufour.jp/users/article/41058

 

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あやふくろう(ヴァイオリン奏者)さん

ヴァイオリン奏者・インストラクター。音大卒業後、グルメのため、音楽のため、世界遺産の秘境まで行脚。現在、自然とワイナリーに囲まれた山梨で主婦業を満喫中。富士山を愛でながら、ヨガすることがマイブーム。

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