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【これからは予防の時代6】メタボリックドミノって?進行とメカニズム

今回は、生活習慣が、内臓脂肪型肥満から、動脈硬化や糖尿病などを引き起こしていく連鎖の様子を、ドミノが順に倒れていく様子に見立てた「メタボリックドミノ」について、ご説明します。

 

メタボリックドミノって?

メタボリック症候群では、内臓脂肪が蓄積したタイプの肥満が、根本的な原因となります。そこへ、遺伝的因子やに環境因子が加わり、これらの危険因子が継続していくことで連鎖し、動脈硬化性疾患を発症してしまうのです。各因子が継続的に連鎖する様子は、よくドミノ倒しに見立てた図として表されます。

イラスト:たちばなかより

 

メタボリックドミノの進行

飲みすぎ、食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣の乱れは肥満をきたします。肥満は皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型に分類されますが、内臓脂肪型肥満を放っておくと、「高血圧」「食後高血糖」「脂質異常症」などになってしまいます。この3つのうち2項目を満たすと、「メタボリック症候群」と診断されます。しかし、メタボリック症候群と診断される「上流から中流」あたりの場合、症状がある患者さんはほとんどいません。症状がないからと、生活習慣を見直さないとメタボリックドミノの下流に進んでしまいます。具体的には、「網膜症」「腎症」「神経症」「心筋梗塞」「脳梗塞」といった病気になってしまいます。

 

内臓脂肪から「高血圧」「食後高血糖」「脂質異常症」になるメカニズム

「アデイポ」は脂肪、「サイトカイン」は生理活性物質を意味し、「アデイポサイトカイン」は脂肪細胞から分泌される様々な生理活性物質の総称です。総称ですので善玉と悪玉があり、通常は動脈硬化を防ぐ善玉の「アデイポネクチン」が出ています。しかし内臓脂肪蓄積が増えると、善玉が分泌されにくくなり、さらに悪玉物質も分泌されます。内臓脂肪蓄積が原因で、インスリン抵抗性や食後高血糖になるのは善玉が減るためで、脂質異常症や高血圧になるのは悪玉の仕業なのです。

 

メタボリックドミノは、上流なら治療も簡単

メタボリック症候群の治療は、メタボリックドミノのコマが倒れるのを止めることです。中流を過ぎてしまうと、症状や病気も出てきてしまうので、簡単ではなくなってきます。初期段階であれば、体形に応じた適正体重と目標体重を設定し、生活習慣の是正、食事療法、運動療法を行うだけで済みます。ですので、初期の段階から積極的にメタボリック症候群の進行を止めることが、非常に大切です。

 

下流に行けば行くほど、難しくなるメタボリックドミノの治療

ドミノの中流以降には、「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」など、前回お話ししたの動脈硬化の危険因子も生まれてきます。つまり、ドミノが進行するにともなって、動脈硬化も進行しているのです。また、ドミノの最下流の「冠状動脈疾患」「脳梗塞」を持っていたり、「糖尿病」やその他リスクが重複している患者さんは、「高血圧」「高LDLコレステロール血症」についてもより厳重に管理する必要が出てきます。つまり、下流に行くにしたがって、生活習慣や食生活に加えて、病気を治療したり、悪化を防ぐこともしなければならないのです。

 

最後に

最後に、慶応義塾大学の広瀬信義教授によると百寿者には糖尿病と肥満者は極めて少ないそうです。特に糖尿病は、全身に合併症を起こすことが原因だと思います。

 

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。