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【これからは予防の時代9】乳ガンの2大要因と罹患率

乳ガンは、現在女性の罹患率ナンバー1のガンで、今後も増加していくと考えられていて、12人に1人が乳ガンになると言われています。今回は、乳ガンの「年齢別罹患率」のグラフを見ながら、原因について考えていこうと思います。

 

乳ガンの年齢別罹患率グラフ

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

年齢別の「乳ガンの罹患率」のグラフを見ると30代後半から50代にかけて増加していき、50代前半から低下しています。これは乳ガンの発生に、女性ホルモンの「エストロゲン」が深く関係しているので閉経すると罹患率が減ってくるのだと考えられます。

 

乳ガン要因1:エストロゲンによる乳腺細胞増殖

エストロゲンの分泌量は月経周期によって変化していますが、エストロゲンが乳腺細胞を増殖させることは、乳ガンの原因の1つと言えます。ですので乳ガンの予防を、閉経前と閉経後に分けて考えるのも理にかなっているのです。また住民検診では、乳ガンについては40歳からマンモグラフィーが導入されますが、乳ガンの年齢別罹患率が40歳ころから上昇していくことなどから考えて理にかなっていることが分かります。月経と関係するので、初経年齢、閉経年齢、分娩歴、母乳育児の有無が乳癌発症と深く関係してきます。

 

乳ガン要因2:家族歴

また乳ガンは、卵巣ガンとともに遺伝性があるとされ、特に家族歴に乳癌あるいは卵巣がんが多発していて、BRCA遺伝子に突然変異が認められるケースを「遺伝性乳ガン卵巣ガン症候群」と呼んでいます。この遺伝性のある患者は、乳ガン全体の5〜10%を占めるハイリスクグループですが、それ以外の90〜95%の平均的なリスクの方とは予防方法は分けて考えたほうがよいでしょう。遺伝性乳癌卵巣がん症候群でなくても家族歴があると乳癌のリスクは上昇します。ですから乳癌の予防には家族歴が非常に重要です。

 

乳ガンは、5年後生存率の高いガンのひとつ

出典:全国がん罹患モニタリング集計、2003-2005年生存率報告(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2013)、独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書

とは言え乳ガンは、5年生存率も89.1%と高めのガンです。もちろん、診断時のステージにもよりますが、ガン全体のなかでは、比較的予後が良好な部類といえます。そして予後が良いことが、実は、マンモグラフィー検診で過剰診断や過剰治療といった問題を発生させてしまう一因にもなっているのです。

 

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。