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【これからは予防の時代10】乳ガンの2大要因の1つ「エストロゲン」を知る

前回、乳ガンの2大要因は、「エストロゲン」と「家族歴」だということをお話しました。そこで今回は、エストロゲンとは一体何なのかを詳しくお話していこうと思います。

 

エストロゲンとは

「エストロゲン」は女性ホルモンの1つで、「卵胞ホルモン」とも呼ばれます。脳の視床下部から「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」が分泌されると、下垂体が反応して「性腺刺激ホルモン」を分泌します。これに卵巣が反応すると、卵巣の中で10〜20個の卵胞が成長を始めるのですが、この卵胞の成長をサポートするために卵巣から分泌されるのが「エストロゲン」です。

 

エストロゲンの作用

エストロゲンの受容体は全身の細胞に存在しているので、「卵胞」以外の全身に作用があります。先ほどの卵胞の成熟のほか、子宮内膜を増殖させて月経を起こします。それ以外にも、乳腺細胞の増殖、動脈硬化抑制、自律神経の働きの調整、骨形成、脂質代謝制御などの作用があります。

 

閉経のメカニズム

思春期以降、閉経までの性成熟期の間は、脳の視床下部から卵巣までのホルモン連携が順調に行なわれるので、女性ホルモンは順調に分泌されます。しかし更年期になると、女性ホルモンは急激に減少してしまいます。それは、40代になると卵胞が急に減少するからです。卵胞を成長させるためのエストロゲンは、卵胞がなければ分泌されません。そして50歳くらいには卵胞がほとんどなくなり、月経がなくなります。これが閉経です。

 

更年期のメカニズムと症状

卵胞がなくなると、女性ホルモンが分泌されなくなる、と先ほどお話しました。ところが卵胞がなくなって、卵巣がエストロゲンを分泌しなくなっても、視床下部はGnRHを分泌して、下垂体を経由してエストロゲンを分泌させるように指令を出し続けます。しかし、いくら指令してもエストロゲンが分泌されないので、視床下部は混乱してしまいます。

 

視床下部は、女性ホルモン分泌のための指令塔であるほか、自律神経を調整する役目もあるので、混乱した視床下部が自律神経を調整しきれなくなって、失調症状を示します。これが、更年期症状です。

 

自律神経が調整できない状態なので、具体的には、動悸、のぼせ、頭痛、肩こり、不安、意欲低下といった症状となります。また骨粗しょう症や動脈硬化などの疾患にも、かかりやすくなってしまうのです。

 

イラスト:たちばなかより

 

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。